買いたい人向け

民泊をM&Aで買う前に必ず確認すべき5つのポイント

はじめに

最近、民泊施設を一から開業するのではなく、すでに営業している施設をM&Aで購入するケースが増えています。
すでに営業している施設であれば、「営業許可や届出についても問題ないだろう」と考えてしまいがちですが、ここには注意が必要です。

特に重要なのが、旅館業と住宅宿泊事業(民泊新法)では、M&A後の営業許可・届出の扱いが異なるという点です。
旅館業は営業者の名義変更ができますが、住宅宿泊事業は売主の届出をそのまま引き継ぐことができず、買主が改めて届出を行う必要があります。

さらに住宅宿泊事業の場合、必要な消防設備を設置せずに営業している「偽装家主居住型・偽装家主不在型」の施設を購入してしまうと、購入後に自分で届出をしようとしても受理されない可能性があります。

そこで今回は、民泊M&Aで施設を購入する前に、営業許可・届出について必ず確認しておきたいポイントを解説します。

旅館業と住宅宿泊事業(民泊新法)の違い

旅館業と民泊新法(住宅宿泊事業)の違い

民泊M&Aでまず確認しておきたいのが、その施設が「旅館業」の許可を取得して営業しているのか、「住宅宿泊事業(民泊新法)」の届出で営業しているのか、という点です。
どちらも宿泊施設として営業できますが、M&Aで事業を譲り受ける場合の扱いには大きな違いがあります。

旅館業は営業者の地位を承継できる

旅館業の場合は、一定の手続きを行うことで営業者の地位を承継し、名義変更することができます。

住宅宿泊事業は買主が改めて届出を行う

一方、住宅宿泊事業の場合は、売主が行っている届出を買主がそのまま引き継ぐことはできません。買主自身が改めて住宅宿泊事業の届出を行う必要があります。

つまり、「現在営業している民泊を買う」という点では同じでも、旅館業なのか住宅宿泊事業なのかによって、購入後に必要となる手続きが異なります。
民泊M&Aを検討する際は、まず対象施設がどちらの制度で営業しているのかを確認することが重要です。

旅館業は営業者の名義変更ができる

旅館業許可の名義変更

旅館業の場合は、事業譲渡によって営業者が変わる場合でも、営業者の地位を承継することができます。

改正旅館業法により事業譲渡でも承継が可能に

以前は、民泊M&Aで旅館業の営業者が変わる場合、原則として新しい営業者が改めて旅館業許可を取得する必要がありました。
しかし、2023年12月13日に施行された改正旅館業法により、事業譲渡についても営業者の地位の承継が認められるようになりました。

そのため、事業譲渡の前に承継について行政の承認を受けることで、売主が取得している旅館業許可を買主が引き継ぎ、営業者の名義を変更することができます。

事業譲渡をすれば自動的に名義が変わるわけではない

これは民泊M&Aにおいて非常に重要なポイントです。
すでに旅館業許可を取得して営業している施設であれば、事業譲渡のたびに一から旅館業許可を取り直す必要はなく、適切な承継手続きを行うことで、既存の許可を引き継いで営業することができます。

ただし、事業譲渡を行えば自動的に名義が変わるわけではありません。譲渡前に必要な手続きを行う必要があるため、M&Aを進める際には事前に管轄の保健所へ確認しておきましょう。

住宅宿泊事業は届出を引き継げない

住宅宿泊事業の届出に関する注意点

一方、住宅宿泊事業(民泊新法)の場合は、旅館業とは扱いが異なります。
住宅宿泊事業では、売主が行っている届出を買主がそのまま引き継ぐことはできません。

そのため、民泊M&Aによって住宅宿泊事業の施設を購入する場合、売主が廃業の届出を行い、買主が改めて自分の名義で住宅宿泊事業の届出を行う必要があります。

「今営業できている」=「購入後も営業できる」とは限らない

ここで注意したいのが、「現在営業しているから、買った後も当然営業できる」とは限らないということです。
買主が新たに届出を行う際には、買主の運営方法や施設の状況などを前提に、改めて届出に必要な要件を満たしていることが求められます。

特に注意が必要なのが、現在の届出内容と実際の運営状況が異なっているケースです。
この点を確認せずに購入すると、買主が新たに届出をしようとした段階で問題が判明する可能性があります。

そのため、住宅宿泊事業の施設をM&Aで購入する場合は、売主の届出内容を確認したうえで、自分が購入した後も新たに届出を行える施設なのかを事前に確認することが重要です。

偽装家主居住型ではないか確認する

偽装家主居住型かどうかの確認

住宅宿泊事業(民泊新法)の施設をM&Aで購入する際に、特に注意したいのが「偽装家主居住型」です。

偽装家主居住型とは

偽装家主居住型とは、実際には家主がその住宅に居住していないにもかかわらず、家主居住型として届出をして営業しているケースです。

買主は家主不在型として届出をし直す必要がある

現在その施設が問題なく営業していたとしても、住宅宿泊事業の届出は買主に引き継ぐことができません。
そのため、購入後に買主自身がその住宅に居住しないのであれば、買主は家主不在型として改めて届出を行う必要があります。

ここで問題になるのが、売主が「家主居住型」として届出をしていたために、家主不在型として営業するために必要な要件を満たしていないケースです。
この場合、「すでに民泊として営業しているから大丈夫」と思って購入したにもかかわらず、買主が改めて届出をしようとした段階で受理されない可能性があります。

民泊M&Aで住宅宿泊事業の施設を購入する際は、届出番号があることだけで安心せず、家主居住型・家主不在型のどちらで届出をしているのか、そして実際にその届出どおりの運営がされているのかを必ず確認しましょう。

消防署の検査が完了しているか確認する

消防署の検査が完了しているかを確認する

住宅宿泊事業(民泊新法)の施設をM&Aで購入する際は、消防署の検査が完了しているかも必ず確認しましょう。

「偽装家主不在型」に注意

特に注意したいのが、家主不在型として届出をしているにもかかわらず、必要な自動火災報知設備(自火報)が設置されていない、いわゆる「偽装家主不在型」です。

住宅宿泊事業では、家主不在型の場合、建物の状況などに応じて自火報などの消防設備が必要になります。
しかし、家主不在型として届出番号が発行され、実際に営業している施設であっても、消防署の検査を受けず、必要な消防設備が設置されていない状態で営業している可能性があります。

購入後に届出が受理されない可能性がある

このような施設をM&Aで購入してしまうと、前述したとおり住宅宿泊事業の届出は引き継げないため、買主は改めて自分の名義で届出を行うことになります。
その際に消防署への確認で問題が発覚し、自火報などの消防設備を新たに設置しなければ届出が受理されない可能性があります。

つまり、「家主不在型として届出済み」「現在も営業している」という事実だけでは安心できません。
民泊M&Aで住宅宿泊事業の施設を購入する際は、必要な消防設備が設置されているかだけでなく、消防署の検査がきちんと完了しているかまで必ず確認しましょう。

まとめ

民泊M&Aで購入前に確認すべきチェックリスト

民泊M&Aでは、現在営業している施設だからといって、購入後もそのまま営業できるとは限りません。

旅館業であれば、営業者の地位を承継することで営業者の名義変更ができます。
一方、住宅宿泊事業(民泊新法)は売主の届出を引き継ぐことができないため、買主が改めて自分の名義で届出を行う必要があります。

そのため住宅宿泊事業の施設を購入する場合は、特に偽装家主居住型ではないか、家主不在型の場合は必要な消防設備が設置され、消防署の検査が完了しているかを確認することが重要です。

「届出番号がある」「すでに何年も営業している」といった理由だけで判断せず、自分が購入した後も適法に営業を続けられる施設なのかを契約前に確認することが、民泊M&Aで失敗しないための重要なポイントです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


よくある質問(FAQ)

営業中の民泊をM&Aで購入すれば、そのまま営業を続けられますか?

必ずしもそうとは限りません。旅館業であれば営業者の地位を承継して名義変更ができますが、住宅宿泊事業(民泊新法)は売主の届出をそのまま引き継ぐことができず、買主が改めて自分の名義で届出を行う必要があります。まずは対象施設がどちらの制度で営業しているのかを確認してください。

旅館業許可は買主に引き継げますか?

引き継げます。2023年12月13日に施行された改正旅館業法により、事業譲渡についても営業者の地位の承継が認められるようになりました。事業譲渡の前に承継について行政の承認を受けることで、売主の旅館業許可を引き継いで名義変更ができます。

ただし、事業譲渡を行えば自動的に名義が変わるわけではありません。譲渡前に必要な手続きが必要なため、事前に管轄の保健所へ確認しておきましょう。

住宅宿泊事業(民泊新法)の届出はどうなりますか?

売主の届出を買主が引き継ぐことはできません。売主が廃業の届出を行い、買主が改めて自分の名義で住宅宿泊事業の届出を行う必要があります。その際は、買主の運営方法や施設の状況を前提に、改めて届出に必要な要件を満たしていることが求められます。

「偽装家主居住型」とは何ですか?なぜ問題になるのですか?

実際には家主がその住宅に居住していないにもかかわらず、家主居住型として届出をして営業しているケースです。購入後に買主自身が居住しないのであれば、買主は家主不在型として改めて届出を行う必要がありますが、家主不在型として営業するための要件を満たしていないと、届出が受理されない可能性があります。

届出番号があれば、消防設備についても問題ないと考えてよいですか?

いいえ。家主不在型として届出番号が発行され、実際に営業している施設であっても、消防署の検査を受けておらず、必要な自動火災報知設備(自火報)が設置されていない「偽装家主不在型」の可能性があります。

買主が改めて届出を行う段階で問題が発覚し、消防設備を新たに設置しなければ受理されない可能性があるため、設備の有無だけでなく消防署の検査が完了しているかまで確認しましょう。


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