はじめに
民泊事業を運営する際は、様々な法規制や基準を守る必要があります。
消防設備の設置、建築基準法など、細かい点にも十分気をつけなければなりません。
この記事では、民泊事業を売却する際に押さえておくべき重要なチェックポイントを5つ紹介しています。
新しい経営者に事業を引き継ぐ際は、安全性と快適性を確保することが不可欠です。
以下の5つの項目を確認し、スムーズな事業譲渡につなげていきましょう。
ポイント①「どのタイプで営業しているか」
これを読んでいるアナタは知っていると思いますが2018年以降、民泊を始めるためには国に認めてもらわなくてはならなくなりました。
種類は大きく分けて3種類です。
ここではその3種類について説明していきます。
旅館業
まず一番シンプルなのが旅館業です。
この許可は旅館業法という法律で宿泊施設と認められるため当然年間365日営業することができます。
ただ、この旅館業の許可申請をするには色々とハードルがあるのでそもそも申請すら受け付けてもらえないこともあります。
住宅宿泊事業(民泊新法)
続いて世間では民泊新法と呼ばれている住宅宿泊事業です。
これは旅館業の許可申請に比べるとハードルは低いのですが届出が受理された場合でも営業できるのは最大で年間180日までとなります。
特区民泊
最後に特区民泊です。
こちらは政府が国家戦略特区として指定した地域で認定を受ければ民泊を運営できるというやり方です。
基本的には年間365日運営することができます。
対象エリアは以下になります。
・新潟県新潟市
・千葉県千葉市
・東京都大田区
・福岡県北九州市
・大阪府(堺市、東大阪市、高槻市、豊中市、枚方市、吹田市及び交野市を除く)
恐らくアナタがこのエリアで運営しているのであればこのやり方で運営していると思います。
比較表
見やすいように3つの比較表も載せておきます。
旅館業 | 住宅宿泊事業 | 特区民泊 | |
営業日数上限 | なし | 180日 | なし |
宿泊日数制限 | なし | なし | 二泊三日以上 |
建物用途 | ホテル・旅館 | 居宅、長屋、共同住宅 又は寄宿舎 | 居宅、長屋、共同住宅 |
住居専用地域での営業 | ✕ | ◯ | ✕ |
ポイント②「消防設備は入っているか」
基本的にどの種類の民泊でも消防法での扱いは変わらないため、今アナタが運営している民泊には条件を満たした消防設備が入っているはずです。
ただ、万が一アナタの民泊が民泊新法の”家主居住型”で運営していたり家主不在型でも消防設備が入っていないのに届出が受理されてしまっている場合は法律違反をしている状態です。
念のため消防設備がしっかり入っているか確認しておきましょう。
ポイント③「消防署の検査は受けているか」
「自分の民泊には消防設備が入っているから安心だな」
と思っていると意外な落とし穴があったりするので要注意です。
それが”消防署の検査を受けていない”ケースです。
消防署の検査を受けていないと法律的には設置していないのと同じ扱いになってしまいます。
消防署の”検査結果通知書”が手元にないかしっかり確認しておきましょう。
もし手元に無い場合は消防署に確認して検査を通っていれば安心ですが、通っていなければ検査を受けていなければ法律違反となってしまうので新たに検査を受ける必要があります。
ポイント④「非常用照明を設置しているか」
建築基準法では災害などの非常時に建物が停電した時のために最低限の明るさを確保する”非常用照明”というものを取り付けなければならないと決められています。
これは旅館業でも民泊新法でも必要なので忘れずに取り付けましょう。
一般的には階段や通路に部屋から玄関までの明るさを確保するために設置することが多いので設置例の図を載せておきます。
ポイント⑤「旅館業と特区民泊の場合」
アナタの売ろうとしている民泊が旅館業か特区民泊の場合、消防設備については消防署の検査を受けていなければ営業ができないので確実にそこはクリアしていると考えて問題ありません。
ただもしアナタが民泊新法から旅館業に切り替えることを前提に売ることを考えている場合、建築基準法で注意しなければならないところがあります。
3階建ての建物に必要な「竪穴区画」
まずは3階建て以上の建物に必要になる”竪穴区画”です。
この竪穴区画とは何かと言うと、下の図のように階段と一部の廊下を併せた”階段室”と客室などのその他の部屋が分かれている状態のことです。
これはもし火事が起きて避難をすることになった時、煙が階段にまわらないようにして安全に避難ができるようにするために、3階建て以上の建物で旅館業を営業する場合に必要だと建築基準法で決められています。
この竪穴区画は普通の3階建ての住宅には原則必要ないと建築基準法で決められているため、設けられていないケースがけっこう多いです。
その場合新たに竪穴区画をする工事しなければならないのですが、これが特殊な壁や扉を新しく造らなければいけないのでけっこうなお金がかかります。
うっかり忘れがちな「接道義務」
続いては”接道義務”です。
建築基準法では「建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない。」と決められています。
ただ、この法律ができる前に建てられた建物だとこれが守られていない場合があります。
法律ができる前に建てられているのでその建物が今建っていることは認められていますが、新しくその敷地に建物を建て直すことはもちろん旅館業に用途変更をすることも認められていません。
要するに「旅館・ホテル」の用途にすることができないので旅館業をとって民泊をすることは不可能ということです。
また、東京都では「旅館・ホテル」の用途だと接道義務が通常2メートルのものが4メートル必要となり条件が厳しくなります。
まとめ
民泊事業を譲渡する時、その建物が法律を守っているか確認をしないと後から重大なトラブルになってしまいます。
最悪の場合、訴訟を起こされる可能性も低くはありません。
そのためにも譲渡をする前にこの記事で解説した5つのポイントをしっかりと確認した上で譲渡の契約をしましょう。
その上で譲渡をすればアナタとアナタの民泊事業を買う人の両方が安心して契約をすることができます。
アナタの民泊が問題なく事業譲渡できることを心から願っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。